スバル レヴォーグ市販モデル試乗 |
スバル「レガシィ」の後継モデルで、国内専用スポーツツアラーとして開発された「レヴォーグ」。2013年の東京モータショーでその姿を披露してスバリストたちの心に火を付け、14年1月から先行予約を開始。同月には、われわれジャーナリストを「ツインリンクもてぎ」に招いてプロトタイプの試乗会を開き、5月には販売が開始される予定だった。ところがその5月になって、「新型アイサイトの量産体制に万全を期すため」との理由で6月20日に発売が延期されていた。
そして6月初旬、市販モデルによる試乗会が開催されることになり、迷わず参加した。1月に乗ったプロトタイプから、どこがどう変化したのかを確かめるのが今回の試乗会の目的だ。コースは御殿場を起点とし、一般道や東名高速道路を走行するもの。箱根のワインディングでの操縦性や、高速道上での安定感、新型になったアイサイト3の使用感など、チェックする項目は多い。
マイルドになった1.6
レヴォーグの基本的な情報は、1月のプロトタイプ試乗(〔1〕、〔2〕)を読んでいただきたい。
今回試乗した市販モデルは「1.6GTアイサイト」「1.6GT-Sアイサイト」「2.0GT-Sアイサイト」の3台。排気量は違っても、グレードによる装備の違いはないため、GT同士、GT-S同士であれば、外観や内装からは見分けがつきにくい。プロトタイプでは、ナビやハンドルスイッチ類が未装着だったものが多かったので、市販モデルでは、整然とした内装の質感やスイッチ類のタッチ、ナビ画面やメーター類の精緻な作り込みとクールな色使いなどに感心させられる。レガシィまではどこかあか抜けない雰囲気があったこうした部分にきっちりと手が入れられ、こだわる部分の多いスバリストも満足できる出来栄えになった。
最初に試乗したのは1.6GT-Sアイサイト。1月から先行予約された1万4~5000台のうち7割が1.6リッターモデルで、Sモデルはサスに高性能のビルシュタインがおごられた、1番人気となっているモデルだ。
走りだしてすぐに気が付くのが、乗り心地の良さだ。プロトタイプでは、スポーツカーのように「コツコツ」と路面から突き上げられるような硬い乗り心地が気になったのだが、市販モデルでは、ビルシュタイン製ダンパーなどの足回りがかなり煮詰められ、後席に家族を乗せても不満の出ないレベルになった。試乗後担当者に話を聞くと、やはりそこが市販モデルとしての大きな変更点ということらしい。
搭載する水平対向4気筒1.6L直噴ターボのインテリジェントDITエンジンは、最高出力125kW(170ps)/4800~5600rpm、最大トルク250Nm/1800~4800rpmを発揮していて、パワー感は十分。リニアトロニックと呼ばれるCVTとのマッチングも良好で、JC08モード燃費は16.0km/L。レギュラーガソリン仕様なので、走行性能と経済性を両立したイチオシモデルといえる。
2.0はスポーツツアラー
次はレヴォーグのトップモデルである2.0GT-Sアイサイトだ。プロトタイプでは「ツインリンクもてぎ」の本コースをわずか1周のみだが全開でアタックでき、まさにスポーツカーのような走り味にホレボレしたことを思い出す。
フロントに搭載する水平対向4気筒2.0L直噴ターボのハイパフォーマンスDITエンジンは、最高出力221kW(300ps)/5600rpm、最大トルク400Nm/2000~4800rpmを発揮する強力なもので、燃費は13.2km/Lだ。
ステアリング右側にあるスイッチで走行モードを変更できるSIドライブは、1.6モデルの「I」「S」に「S#」が追加された3モード。また、ハイパワーに対応したCVTは、のんびり走るとスムーズな無段変速、アクセルを踏み込むと段付き感のあるステップ変速になるという変速特性を持つスポーツリニアトロニックだ。さらに「S#」でマニュアルモードを選択すると、8速CVTはクロスレシオとなり、パドルシフトによる豪快な加速が楽しめる。
足回りは1.6モデルと同様に、2.0モデルでも少し変更があったようで、コーナリング中は適度なロール感があり、そこからグッとGが立ち上がるような特性。つまりは一般道の走行に適したものになっている。かといって、直進時のピッチングは最小限に抑えられていて、安定感のある素晴らしいセッティングだ。また、4代目レガシーからは排気が等長・等爆となり、脈動による「ドロドロ」というスバル特有のエンジン音は聞こえなくなってしまったが、レヴォーグでは遮音対策がさらに徹底されているので、加速中やハイスピードの走行中でも車内の静かさは特筆ものだ。
こうした特性を見ると、2.0モデルは、多くの乗員と荷物を疲れ知らずでさらに速く遠くまで運ぶ能力に長けた、スポーツツアラーと呼ぶにふさわしいクルマに仕上げられたようだ。
アイサイトは3世代目
最後に乗った1.6GTアイサイトでは、新型になったアイサイト(ver.3)の性能を探ってみた。使用するステレオカメラは、高解像度化とカラー化、3D画像処理エンジンの高性能化により、基本性能が大幅に向上した。具体的には、前方約110メートル、角度30度の範囲が認識できるという。また、薄型カメラカバーを採用したことで、張り出し感を抑えた、ドライバーの視界を邪魔しない形状になった。
まずは、今回新機能として追加された「アクティブレーンキープ」を確かめるため、御殿場から東名高速に乗ってみた。時速65キロ以上でこの機能が働くため、ACC(全車速追従機能付きクルーズコントロール)を時速80~90キロにセット。すると、すぐにメーターセンター部の車線表示部が白く点灯し、車線中央維持が作動し始めたことが分かる。緩いコーナーに差し掛かって車線から外れそうになると、車線逸脱抑制が働き、自動でステアリングにトルクが伝わってきて、車線中央部分へ戻してくれるのだ。
また、このとき前方の車に追い付くと、メーター内の車線の中にスバル車の後ろ姿が現れる追従運転になり、自動運転に近い状態(ステアリングを握っているのは必須条件だが)となる。カメラのカラー化により前車のブレーキランプに反応するので、特に減速時には自然な追従動作を見せてくれ、ドライバーへの負担が少ない、疲れ知らずのロングドライブが楽しめそうだ。
次に箱根の一般道でも同じ機能を試してみた。タイトなコーナーに差し掛かると、アイサイトは一瞬前車を見失ってしまう。この時、急激な加速が行われないような抑制機能が働き、一定速度でコーナーをクリアしてくれるので安心だ。脱出部分ではすぐにまた前車を捉えてくれるので、ワインディングのような場面でも、追従機能は十分満足できる性能を持っていると確信できた。
こうして2種類の排気量を持つ市販モデル3台に続けて乗って感じたのは、そのどれもが、乗員と荷物をたっぷり載せ、遠くまで一気に駆け抜けていくグランドツーリングカーとしての完成度が高められたということ。国内専用として開発されたので、サイズもジャストフィット。パワーと乗り心地のバランスも、最近の国産車の中では出色の出来と断言できる。一方、プロトタイプで味わったスポーツカーのようなガチガチの足回りは、このあと登場するスポーツバージョンの「WRX」に引き継がれたのかもしれない。価格は1.6GTが266万7600円、同GTアイサイトが277万5600円、同GT-Sアイサイトが305万6400円、2.0GTアイサイトが334万8000円、同GT-Sアイサイトが356万4000円となっている。
主要諸元(1.6GT-Sアイサイト)
寸法(mm) | 4690(全長)×1780(全幅)×1490(全高) |
車両重量(kg) | 1550 |
ホイールベース(mm) | 2650 |
乗車定員 | 5人 |
駆動方式 | 4輪駆動 |
最小回転半径(m) | 5.5 |
エンジン | 水平対向4気筒直噴ターボ |
総排気量(L) | 1.599 |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
燃料タンク容量(L) | 60 |
最高出力(kW〔PS〕/rpm) | 125〔170〕/4800-5600 |
最大トルク(N・m/rpm) | 250/1800-4800 |
トランスミッション | CVT |
JC08モード燃費(km/L) | 16.0 |
車両本体価格 | 305万6400円 |