トヨタ、米市場で大きな挑戦 「カムリ」「プリウス」デザイン一新 |
トヨタの米国市場の主力モデル「カムリ」の後部。次期モデルはこれまでにない斬新なデザインになるもようだ(ブルームバーグ)
トヨタ自動車は、米国の自動車市場で高い人気を誇るセダン車「カムリ」とハイブリッド車(HV)「プリウス」のデザインを一新する。同社が目指すのは、豊田章男社長自らが提唱する「ワクワク、ドキドキするようなデザイン」だ。
ただ、慣れ親しまれてきたデザインを大幅に変更することによって大衆車としての魅力を失い、両車種の長年のファンを失うというリスクもある。大幅な“イメチェン”はトヨタにとって大きな挑戦となりそうだ。
カムリとプリウスの2車種は昨年の同社の米国販売台数の約3分の1を占める主力モデルだ。トヨタは現在、「ワクワク、ドキドキ」を意味する「ワクドキ」と いう言葉をスローガンに、カムリとプリウスの次期モデルのデザインの全面見直しを進めている。この「ワクドキ」感を取り入れた場合、両車種のデザインはこ れまでのものと比べて大きく変わることになりそうだ。
感動・印象的に
トヨタの米国販売部門トップの大原一夫氏は、カムリには推計500万人とされる巨大な顧客基盤がある。
このため、デザインの変更には限界があるとみている。とはいえ、同氏もカムリの現行モデルのデザインは「少し保守的すぎた」とし、これを「アグレッシブなデザインに変えていきたい」と語る。
トヨタ米設計スタジオ担当社長、ケビン・ハンター氏は「カムリの次期モデルは、より感動的で、印象的なデザインに生まれ変わる」と述べた。
カムリは、米乗用車部門の販売台数首位の座を12年連続で獲得している。2013年の販売台数は40万8484台だった。同部門ではホンダの「アコー ド」、日産の「アルティマ」、フォード・モーターの「フュージョン」などの新型モデルを抑えて、1位となった。トヨタは今年も同車が首位の座を維持し、 13年連続の販売台数トップを達成すると鼻息も荒い。ただ最近では韓国・現代自動車の「ソナタ」や米クライスラーの「200」などが販売を伸ばし、カムリ を追い上げている。
一方、プリウスも激しい競争にさらされている。プリウスはここ10年の間、米国で最も進んだHVとして、唯一無二の地位を築いてきた。
しかし、ここにきてライバル各社が新型HVやプラグインHV、電気自動車(EV)を投入し、その優位性は薄れつつある。日産のEV「リーフ」や米ゼネラ ル・モーターズのEV「シボレー・ボルト」、テスラモーターズのEV「モデルS」などの攻勢を受けており、プリウスの独走状態にも陰りが見え始めている。
トヨタはライバル勢を迎え撃つため、プリウスのデザインを一新する考えだ。ただ、デザイン変更によるファン離れが進むことを、カムリほど心配する必要はなさそうだ。
自動車データサービス会社ケリー・ブルー・ブックのアナリスト、ジャック・ネラド氏は「プリウスの顧客は、このブランドに非常に忠実だ。異なるものを柔軟に受け入れる傾向が高い」と、その理由を説明した。
世界最高の燃費を
トヨタによると、新プリウスは外観とレイアウトが変更されるが、三角形をモチーフにした「トライアングル・シルエット」は維持されるもよう。空気力学的効率を最大に引き上げ、最高水準の低燃費を実現するのに不可欠なためだ。
同社でデザイン本部長を務める福市得雄専務役員はプリウスの次期モデルについて「未来的」なデザインに加え、「世界最高の燃費」を目指す方針だと語った。(ブルームバーグ Alan Ohnsman)
リサーチ:テック サイバーファーム ウェア(半田貞治郎)