新型ティアナに見る、日産の「割り切り」戦略 売れない日本向けセダンの開発はムダ!? |
日産自動車は1月20日、中級セダン「ティアナ」をフルモデルチェンジし、2月5日に発売すると発表した。価格は242万9700~304万5000円。
2003年に登場した初代から数えて3代目となる今回の新型ティアナ。全世界120カ国以上、年間60万台の販売を目指す日産の世界戦略車だが、日本の自動車市場でのセダン衰退をあらためて印象づけるモデルとなった。
新モデルとはいうものの、グローバルで見れば、2012年6月に米国で5代目「アルティマ」として発売したのを皮切りに、2013年3月には中国(車名はティアナ)にも同じモデルをすでに投入しており、日本は世界デビューから実に1年8カ月遅れの登場、ということになる。
日本は後回し
中級セダンは、世界的に見れば最も市場の大きいカテゴリーの乗用車だ。アルティマ/ティアナは、米国で月間2万台以上、中国でも月間1万台規模を販 売する、まさに屋台骨を支える車種。しかし、今回の日本での月間販売計画はわずかに520台と、米国や中国とはケタが2つも違う。いかにおひざ元とは言 え、こうまで市場規模が違っては、投入を後回しにするのもうなずける。
販売が見込めないだけに、日本市場をターゲットとした開発もほとんど行われていない。旧モデルまでは、海外向けとプラットフォーム(車台)は共有化されていたが、外観デザインなどは日本向けに開発され、一応、日本仕様のクルマになっていた。
だが、今回は外観デザインを含めて、ティアナ/アルティマはグローバルモデルとして統合され、それがそのまま日本に投入された。細かくいえば、フロントマスクのデザインなどが地域ごとに異なっているが、日本モデルは中国仕様「ティアナ」の同等車だ。
エンジンもガソリン2.5リットルの1種類に減らされた。中国にある2リットルや米国にある3.5リットルは導入されず、ハイブリッド車も準備されなかった。
ハイブリッドは間に合わず
中級セダンとして国内外で競合するトヨタ自動車「カムリ」、ホンダ「アコード」は、いずれも日本向けにはハイブリッド専用車となり、ハイブリッド信仰が強い日本市場を意識し、生き残りを目指している。
日産もいずれ、ハイブリッド車を投入する計画だ。ただ、トヨタやホンダに比べてハイブリッド車への取り組みが遅れていることもあり、モデルチェンジには間に合わなかった。
また、自動ブレーキシステムも採用を見送った。日本市場で急速に人気を高めている自動ブレーキは、他社では軽自動車にも搭載されている。日産もスカ イラインやSUV(スポーツ用多目的車)「エクストレイル」などの中・上級車に加え、コンパクト車「ノート」にも採用。車格的にはティアナにはあって当然 だ。日本の販売サイドは搭載を要望したというが、月販500台そこそこのクルマ向けに開発するのはムダ、と判断された。今後搭載されるとすれば、米国、中 国などグローバル市場での投入に合わせて、となりそうだ。
かつてローレル、セフィーロといった日産を代表するクルマが登場した中級セダン。ところが、日産にとって日本向けは、市場に合わせた開発すらほとんどなされないマイナーなカテゴリーとなってしまった。
リサーチ:テック サイバーファーム ウェア(半田貞治郎)